秘めごと (テニプリ 乾×海堂)
夜の音がする。鈴虫の鳴く声は、
闇が深いほど、澄んだ響きで伝わる気がする。
下着の中に侵入してきた手を、海堂は拒まなかった。
嫌悪しつつも期待していた。
乾は背中にぴたりとくっついてくる。
自分の体の熱さを思い、海堂は身を縮めた。
乾の手が、ゆっくりと擦り上げる。開けたままの窓から
風が入ってきて、海堂の体を冷やした。
目を閉じたまま、声をこらえていると、耳に乾の息が掛かった。
笑うようなそれは、意図的ではなかったかもしれない。
いずれにせよ、それは海堂を高ぶらせるだけだった。
「先輩…っ」
声を押し殺して訴える。
寝返りをうち、乾へ向き直っても、動きはやまない。
「耐えられねえっス…」
声が震えた。乾の手に力がこもった。思わずアッと声を上げた。
「俺のにも触ってくれ」
囁くような声。
乾の考える事や、好みや趣味の一つ一つを明されるたび、困惑する。
それを見て、いちいち乾は喜ぶ。
乾への興味のために、屈折した愛情を飲み込むたび、泣きたくなる。
海堂はゆっくりと手を伸ばして、乾の下着を下ろし、
責めるように握った。
「あ…」
乾が吐息を漏らす。そのまま擦ると、乾は息を荒くした。
おぼろげな視界に、乾の視線を感じた。
乾は目を逸らさなかった。
海堂は与えられる感覚と、与えている快感に喘いだ。
「海堂」
乾が強く擦り上げる。
海堂はこらえるように俯く。
「俯いちゃ駄目だ…っ」
乾の声は、落ち着きを失って上ずっていた。
「顔が見たい」
海堂は仕返しするように乾のものを擦った。
乾の言葉が途切れる。息遣い。
「いやらしいっすよ先輩」
責めるように言うと、乾は苦しそうに笑った。
先端を撫でられ、海堂は思わず腰を浮かせた。
「お前もだ」
キスはしないで、意地を張って、ギリギリまで耐えようとしていた。
そうして、感じている顔を脳裏に焼き付ける。
乾もそうしているのだと、海堂は思った。
Copyright © 2002-2003 SHURI All Rights Reserved