冷たい手 (テニプリ 乾×海堂)


「お前手が冷たいな」
乾の言葉に、海堂はハッと我に返った。乾の左手が、 右手を握っている。それはとても自然に繋がれているように思えた。
大学生になった乾は、制服で戒められていた何かから解き放たれたような、 自由な空気を持っていた。二ヶ月前にあった時は、 二人とも高校生だったのに。
「先輩は温かいっすね、」
ちらりと横を歩く乾を見たら、目が合った。
「俺は心が冷たいからね」
乾は前を向いて口の端を上げて笑った。繋いだままの手を コートのポケットに入れる。
「どこ行くんすか」
風に撫でられた前髪を左手で掻きあげながら、海堂は聞いた。
「暖かくなれるところ」
「別に、寒いわけじゃねえっす…もう春ッスよ、先輩」
「春だから、だよ、海堂」
「…」
海堂は俯いた。訴えるように、乾のポケットの中で手を握り返した。 乾の指が絡んできた。夕日は頬に暖かいのに、乾の手は離れなかった。



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