ドクター (テニプリ 乾×海堂)


「ここがいたいの?」
その人の手が、胸を抑えた。海堂はこくんと頷いた。 なぜか海堂は子供で、不安を堪えている気持ちが、 いじらしく感じられた。
先生の顔は、そばにいるのに遠く見えて、 診察室の明かりばかりが眩しい。
「びょうきですか?」
子供の海堂は聞いた。先生は首を振った。 笑った口元だけがはっきりと見えた。誰かに似ているのに、 思い出せない。
「遊んできていいよ」
先生の声が言ったが、海堂は先生を見つめていた。 正しい答えをくれるまで、じっとじっと待っていた。



「…」
目を開けると、乾が目の前で静かにノートに向かっていた。
「先輩」
「良く寝てたね」
乾は顔も上げず言う。
「何か…変なユメ見たんすけど」
「そう」
乾は言ったっきり、黙ってしまった。
じっと乾を見つめても、乾は自分のことに集中していて、 海堂には気づいてくれない。
「先輩」
悶々と考え続けて、ついに海堂は呼んだ。
「胸が痛いっす」
海堂を見て、乾はやっとペンを置いた。
「…どこが痛い?」
乾は傍に来て、海堂の胸に手を当てた。
「ここが痛いのか?」
「っす」
「痛くないようにしてあげよう」
海堂は目を閉じた。特徴のある微笑みが、瞼の裏に残る。 乾を抱き返した。
「先輩、俺、病気っすか…」
乾が頬を寄せてきた。
「そうかもしれない」
期待するように乾の目を見た。
「恋の病かな」
ハハハ、と笑ってみせて、乾は体を離そうとした。 急いで海堂は引き止めた。
「海堂」
困ったように言って頭を撫でてくれる。
乾の肩に頬を押し付けた。
好き。
また胸が痛くなった。顔が熱くなるのがわかった。
「痛え…」
呟いたら、乾はじっと抱いてくれた。



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