棘 (テニプリ 乾×海堂)


月明かりの射すワンルーム。海堂を初めて部屋に上げた。

海堂が俺の背中に爪を立てる。
猫みたいな海堂。掴まるものを探して、最後に俺を見つける。
清い関係でいたのは、海堂が中学を卒業するまで。

海堂は光る黒い瞳で俺を見上げる。
俺だけがその真意を読み取れることに、優越を感じる。
誰も知らない海堂。
誰にも見せない海堂。
俺だけが、知っている。
俺だけが、見ている。


「先輩も痛いっすか」
海堂は時々聞く。切なさを感じているのは、自分だけじゃないと、 何度も確認する。
ずっと痛いと答えてきた。 そうすると海堂は安心したように、頷いて眠りに落ちるのだ。
「…本当は」
俺は海堂の引き締まった体を見た。下着一枚でベッドに横たわっている。
「痛いと思ったことなんてないよ」
海堂の気配が、少し緊張した。面白いから、ほっておこうか。 思いながら言葉を継ぐ。そんな自分に酔っている。
「棘が抜けたらつまらないだろ」
俺が笑いかけると、海堂は瞬きした。
「痛いけど痛くないんすか」
「痛みなんてもう、どうでもいい」
海堂の上に覆い被さった。触れるだけのキスをする。
「痛いのが快感、ていうの、海堂にはわからないだろうなあ」
俺は遠くを見るようにした。
「マゾっすか…?」
呟くように言って、海堂は眉を寄せた。 こいつの思考は単純で真っ直ぐだ。
思わず俺がニヤリと笑ってしまったので、海堂は気づいたらしかった。
俺を突き飛ばし、背中を向けて寝てしまう。 それすら俺を喜ばすことを知らないで。

恋の痛みの真っ只中。
痛い君を見られるのなら、俺の痛みなど些末な問題。


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人の悪い乾が理想(笑)

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