春のおかず (銀魂 銀x新)
僕のおかずは、紛れもなくお通ちゃんだ。
お通ちゃんの夢に酔っていた僕の腹に、何かがどすんと落ちてきた。
「もう…銀さん、重、」
銀さんの足だった。どかそうとしたら勝手にどいた。
「…俺を差し置いてソファを独り占めか、いいご身分だなコラ」
銀さんが床から起き上がり、欠伸する。
「銀さんが勝手に落ちたんでしょう、そっちで寝てたくせに何こっちまで転がってきてんですか」
銀さんは僕の言葉なんか聞き流して、頭を掻きつつ時計を見る。
「神楽ちゃん遅いですね。団子買いに行ってもう一時間経ちます」
「あー、もう切れる。神楽、どこへ行ったー」
銀さんは虚ろな目で空を見ている。
依頼もない、キャサリンの襲来もない、窓から見える空はミズイロで、小鳥が鳴いている。
ふぅ、とおもむろに息を吐き、銀さんが口を開いた。
「世の中はうららかな春だってのに、この血糖値の切なさはどこから来るんですか、新八君」
「僕は銀さんの足に起こされたことが切ないです、せっかくお通ちゃんの夢を見てたのに」
「お前な」
振り向いたその目が据わっていた。糖分が切れた瞬間だった。
「お通ちゃんと俺の血糖値、どっちが大事だと思ってる」
「もちろんお通ちゃんですけど」
「聞き捨てならん」
「うああ」
強引にのしかかられ、胸倉を掴まれた。
「待って待って銀さん、落ち着いて。神楽ちゃんもうすぐ帰ってきますって」
銀さんが僕の顔を見て黙り込む。眼鏡を奪われた。
「ちょっと、返してくださいよ」
「神楽が帰ってくるまで、お前で切なさを紛らわせることにした。以上」
銀さんは僕に跨ったまま、後ろへ下がった。袴紐が緩んだ。
「以上!って何なんですか! ちょっと、何、やめてください!」
有無を言わさず脱がされる。
「ちょっと! マジで何してんですか! 銀さんそっちの人だったってオチ?!」
「だったら何よ」
銀さんはむっつりした顔で言っているような気がした。だからたぶん、両方いける人なんだ、とわかった。
「ぅ、」
銀さんが僕のを握った。体が緊張した。
「触られたことねーんだろ。自分でシコシコやってんの?」
ぼんやりと見える輪郭を僕は睨んだ。
「やっぱりお通ちゃんとか? ゴリラに育てられた姉ちゃんとかは?」
「姉上では萌えません!」
「やっぱりな〜」
「アンタ、それも失礼だろ!」
「悪い悪い、姉ちゃんゴリラじゃなきゃカワイイ部類だもんな」
「全然フォローになってません!」
吐息を抑えられない。
「ぎ、銀さんは誰がオカズですか」
思わず腰が動いてしまった。銀さんは絶対、ニヤニヤ笑いながら僕を見ているんだろう。
「聞きたいか、アン?」
「僕は…っ、こんな、ことされてんだし、銀さんだって告白すべきでしょう! それでおあいこです!」
必死で言ったら、鼻で笑った。時々、どうしようもなくこの人がむかつく。
「教えて欲しいのか。だったら一発抜いてからだ。頑張ろうな」
「ちょ…っとおおお」
銀さんの手がぎゅうっと根元を掴んだ。そのまま擦り上げられて、今度は先端をいじる。
逃れたくて動いても、快感が増すだけだ。もうやめて欲しい。気持ちよすぎ。
「堅い堅い。やっぱお前も男だね」
「僕をバカにしてんですか…!」
「ほんとお前面白いわ。やめてやめないで、って感じじゃない? 今」
「ええ、そうですよ…っ! あんたのせいでしょうが!」
「もうイきたいの? ん?」
「○ン○ンに話しかけないでください!」
「あれ、見えてないんだと思ったのに、見えてるの?」
「空気でわかりますよ、銀さんがいかに変態かということは!」
「じゃあこうしても、これ以上は軽蔑されないってことかぁ?」
「うわぁあああ」
生ぬるい粘膜に包まれた。口。それはたぶん口だった。口で吸い上げられちゃったよ。
どうしよう。僕って誰。
ああもう、僕は何をしてるんだ。給料も貰ってない。姉上はどうしてるだろう。
眼鏡がないと天井も見えないし、僕なんてどうしようもない。
こんなくだらない男と退屈してるヒマがあったら、またレジ打ちしようか…
放心状態の僕の両足を、開こうとする奴がいる。
!!
更なる危機に一気に目が覚めた。出し抜けに叫ぶ。
「僕、チョコ買って来ます!」
「えっ」
僕は思いっきり、蹴りを入れた。
「痛えぞ、新八…姉ちゃん仕込みか」
げふげふと咳を繰り返す。
「ここまできて怖気づくんじゃねえ。男なら、ガンと俺を受け止めてみませんか!」
「言葉の使い方間違ってますよ!」
逃げようとした瞬間、腕を捕まえられ、ソファに引き戻された。
「ぐちゃぐちゃ言ってねーで、体を預けろ少年」
「お断わりですよォォ!」
まとわりつく腕や足に捕らわれて、また組み伏せられる。
「銀さ、ッ…!」
不意にそんなところに、何かが入った。悶えた。
恥ずかしさで体が火照っている。勘弁してほしい。早く逃げたい。
「いい年した大人なんだから。ほんと発情期ならそーゆー店に行って下さいよ」
「そんな金があったら、お前なんか相手にするか」
「神楽ちゃんはまだですか」
「帰らないんじゃあしょうがないね」
差し込まれた指が抜け、同時に何か、すごい無茶をされた感じがした。
「…ッテエ! 銀…さ」
「体の力を抜け…なーんて言ってみる」
銀さんの声は面白がっている。
「無…理に決まってんじゃ、ないです…か!」
「おう。よくわかるぞ、お前の辛さ」
「つーか、女役のほうの、経、験、者!…かよ!!」
死ぬ。
少しでもラクになろうと息を吸った瞬間、唇が塞がれた。
ダメだ、何でこんな人と接吻してるんだよ。
ぐいと、足を抱え上げられる。そんなことしたらもっと痛い、まだ入れる気かよ変態。
銀さん。
ちくしょう。舌噛み切ってやろうか。
夢でお通ちゃんにするより、生々しい。温かい。
想像する女の子の唇の柔らかさより、今差し出されているものに、グラリと来ていた。
ズルイじゃないか。
あんたがカッコイイことなんて知ってる。
惚れたのはこういう意味じゃなくて、
ついていこうと決めたのは、こんな銀さんじゃない。
銀さんの唇を噛んだ。銀さんは唇を離した。
銀さんの血の味がした。
「ちくしょう、この○ンタマ!!」
怒鳴りながら、まだ繋がっていることを意識してしまう。
「早く終わらせろや!」
「怒んなよ、ガキはこれだからいやなんだよねー」
「タダイマヨー!」
「おせーんだよ!」
銀さんが反射的に叫んだ。すごい勢いで僕から興味を失い、ドサリとソファに投げ出す。
早く終らせるどころか、腹の上に何度となく出されたドロドロのものは、乾いてしまっていた。
銀さんは乱れた着物を合わせながら、神楽ちゃんに寄っていく。目的はひとつ。
団子。
「私、ちゃんと買い物してきたネ。銀ちゃんなぜ怒る」
「今何時だと思ってんだ。プラプラプラプラ定春のお散歩にお付き合いですかコラ」
「人気商品どこ行っても売り切れネ。でも見つけてキたアルヨ」
袋を逆さにして、銀さんの頭から浴びせかける。
「オイシイ酢昆布アルヨー!」
「てっめえぇ…!!!」
銀さんが目を剥いた。
…挑んだところで、神楽ちゃんと定春に勝てる奴なんていない。
思い知れ、坂田銀時。腰が痛いし眼鏡もないから、今日は止めません。
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何か久しぶりにハマってしまいました。無気力攻にキレ受。新しいッス!(゚∀゚*)