春のおかず6 (銀魂 銀x新)

しがみつく理由が見つからないから、僕は銀さんの着物を掴んでいる。
このまま帰るのかな。
気がつけばそんなことを考えていた。
問題は、銀さんのおかずが何かということ。
僕はそれが知りたい。


万事屋を通り過ぎて、着いたのは僕の家だった。
「ほんっと、わかりやすいですよね」
原チャリから降りながら僕は嫌味たっぷりに言ってやった。
「その軽蔑のまなざしがだんだん心地よくなってきちゃってさぁ、」
「キモ! Mですかアンタ!」
「キモ!とか言うんじゃないよ。銀さん傷つくから」
ハンドルにかけたコンビニの袋を取ると、銀さんは促す。 袋のなかには入手したらしいジャンプ。それと団子。
「…」
僕はどうしたいんだろう。 そうだ謝ってもらうんだ。ジャンプを読む前に、誠心誠意、謝らせてやる。
それから。
おかずを白状させるんだ。
「茶なんて出しませんよ」
銀さんからコンビニ袋を奪い、家へ入った。


「ふざけないで、ちゃんと謝ってください」
銀さんに向き合って、どれくらい経ったんだろう。日が傾いている。
「僕は納得行かないです。あんなのむちゃくちゃです!」
「いやあ、だから、ごめん。ごめんなさい。すみませんでした」
「全然心がこもってません!」
「申し訳ありませんでした。ご無礼をお許しください」
「…反省が足りない」
沈黙。
「新八君、…そろそろ団子をください。せめてジャンプを…」
「気が済んだら返します」
「お前、自分でまたあの状況を再現してるぞ」
「お茶でも飲んだらどうです? せっかくいれてあげたんだから」
銀さんは渋々、冷えたお茶を啜った。
大きく息をつく。空気が変わったのを感じた。
銀さんは膝を崩し、足をだらんと伸ばして、後ろに手をついた。
「だーかーらー。俺もう 限 界 なの。お前があいつに連れてかれたってヅラから聞いてよー、 らしくなくもう本っ気で助けに行っちゃったわけよ。銀さん今日は満身創痍だから。 今日の予定にジャンプの早売り入手は入ってたけど、新八助けに行くってのはなかったから。 急に予定が変更になっちゃって、身体が飢えてるのね。わかる?」
「そんなの知りません!」
「…」
銀さんが溜息をつきながら天井を見上げた。
「…銀さんはいいですよ! あの時傷ついたのは僕の方ですから! 銀さん傷ついてませんから!  僕がどんなに苦しかったかわかってないでしょう!」
「いや、怪我は治ったでしょ。それに治るまで俺も我慢したし」
「そこじゃないです! なんでわかんないんですか」
ふわ、と何かがあふれ出したけど、辛うじて零さなかった。
「ほんとに甘ちゃんだねオマエ。泣くんじゃねーよ、タマついてんだろうが」
銀さんが涙を拭こうと手を伸ばした。
「泣いてません! まだ泣いてません!」
僕は銀さんの手を払った。
「もういいです。意地でも謝らせてやる!」
立ち上がった僕を、銀さんの視線が追いかけてくる。僕は押入れから布団を出して敷いた。
「脱げや、オラ!」
「お前、意味わかって言ってんの?」
「冗談でこんなことしませんよ!」
怒鳴ったら、涙も引っ込んだ。


障子越しの夕日は柔らかい色をしている。
「だから入れませんって言ってるでしょ」
「下にはなりません! そうは行きません!」
銀さんの上に寝そべって、頬を寄せた。 僕が考えてることも知らず、銀さんは僕の頭を撫でた。
「今日はアイツいねーだろうな」
銀さんが呟く。やがて手は移動して、僕の肩を、背中を、腰を愛撫する。
「いませんよ。屯所で酔っ払って寝てるはずです。確認済みです」
「そっか…それならいいや。姉ちゃんは?」
「友達の家にお泊りです」
答えながら、銀さんの頬に唇を押しつけてみた。浮かばれない接吻だ。
「意外に大胆だね。誘うならやっぱり入れたいなーなんて」
「嫌です」
僕はキッパリ断わって、身体を起こした。銀さんは残念そうに腕を放した。
銀さんの足の間に膝をつき、それに触れた。
「ちょっと、おい、」
銀さんが起き上がる。
「そんなサービスしてくれるの?」
「サービスじゃありません。これは 報 復 です!」
「…なるほど」
銀さんはやっと事態を飲み込んだようだ。
あの時、銀さんが僕にしたように、銀さんのを擦り始めた。
「…っ」
少し経つと、銀さんが息を吐き、うずうずし始めた。
「新八、もういい、もういいよ。マジでキミの思いは受け止めた」
「いいえ、まだこんなもんじゃありませんから。僕の思いは!」
「厳しいなあ…」
銀さんは落ち着きなく瞬き、時折天井を見上げる。
「…」
僕らはいつしか、睨みあっていた。
銀さんは堪えてるせいかガン飛ばしてくるし、僕も銀さんが耐えられなくなるのを見るために、 じっと見返していた。負けられなかった。
せわしなく擦りあげると堅くなって、 銀さんは時々苦しそうな顔をするけれど、まだ持つらしい。
「何か言うことないんですか。喘いでもいいですけど」
「いや…それは俺のプライドが許さない」
「素直じゃないなあ銀さん。もういっぱいいっぱいじゃないですか?」
「いや、とんでもない。新八君がこんなクールなのに、一人でウッとか出来ませんから!」
「我慢しないでください。僕ね、もう受け止める用意は出来てますから。 どんな情けない様でもドンと来いですから」
「それ愛情と違わない…?」
「銀さんのこと、スキですよ僕。大好きですよ僕」
銀さんの根元を握力の限りで握る。内股の筋肉がひくひくと震えた。銀さんが呻く。
いつのまにか、銀さんを見ながら激しく呼吸していた。もっといじめてやる。
「アッ、ちょっと今イキて…、そこ、やめて」
激しくしたら銀さんがギュッと目を閉じた、身体を強張らせて。
「僕、こういう銀さんが見たかったのかもしれない。もっといじめましょうか」
「マ、マジでロープ。ロープ! すいませんでした! もう許し…っ」
僕はそれでも銀さんがハァハァ言うのを眺めた。もっと強く、きつく擦りあげる。銀さんは震えてる。 息遣いだけがある。
「ア、…新八…っ。勘弁、」
銀さんの身体がビクビクしている。耐えている表情はすごくいい。 誰かをおかずにするときも、こんな顔してるんだろうか。
「ほんとに、悪かった…って、あやま…る」
唇が震えている。銀さんの手が、僕の手に重なった。熱くて大きな手のひら。
「ごめ…、ごめんな、ホント」
銀さんの顔を見て、勝利を確信した。
手を離すと、勢いよく射精した。


「新八…てめー覚えとけ…」
寝そべって呼吸を繰り返す銀さんを見ながら、僕は満足していた。
「これでおあいこですよ。言っときますけど、最初にこんなことをしたのは、銀さんですからね」
僕は身体に飛んだ銀さんのを拭きながら言った。
「謝ってくれないから実力行使に出たまでです。自分が悪いんじゃないですか」
不意に腕を掴まれた。強引に引き寄せられる。
「何ですか」
銀さんの手が、僕の足の間にあるものに触れた。
「ちょ、」
「興奮してやがんの」
銀さんがにやあ、と笑った。僕は自分が射精したことにも気づかなかった。
「俺で興奮したの? それともこっちのせいかな」
銀さんは少し腰を揺らして誇らしげに言った。
「何言ってんですか! 変態!」
抱かれたままゴロリと転がる。僕は下になった。
「嫌です! 絶対ヤですよ! やっぱり反省なんかしてないじゃないですか!」
片足を捕えられる。銀さんは萎えたそれに触れてきた。震えた。
「反省してるって。そんな悲しい顔しないの」
「あ、」
擦られて声が出てしまう。
「新ちゃんのいっぱいイかせてあげないとね。銀さんすごい使命感がわいてきましたー」
銀さんは自分が出したものを僕のそこに塗りつけた。
「いきなりソッチですか!」
「はいはい、いい子にしようね」
指が挿入された。どうしよう、まただ。
「離せ! もう、離してくださいよ! これは僕の報復なんです! これじゃあ、 やり返したことにならないです!」
銀さんは喚いても暴れても受け流す。
「もう…、嫌だっ…!」
恥ずかしい時間ほど長く感じる、あの時もそうだった。
「息止めちゃだめですよー」
「あ、あああっ、銀さんやめ…っ」
強引な圧迫感が僕を貫いていく。
「…! …っ!」
「わかったわかった、もうここで。ここでね。今回はここまでね」
銀さんを抱きしめる。銀さんが僕のに触れ、擦り上げる。ずるいよ、銀さん。
「ちょっと体位変えるか」
「え?」
答える前に身体を起こされ、銀さんの上に座らされていた。
「ヒ、」
喉から出たのはもはや声にならない音だった。僕は慌てて銀さんにしがみついた。
体重が、抵抗もむなしくそれを飲み込んでいく。
「これは俺のせいじゃないから」
「この…鬼畜…!」
僕は震えながら息を吐いた。いっそのこと気絶したい。そのほうがラクなのに。
唇を押しつけられる。そうしていたって、目じりに涙が溜まる。
「う、」
銀さんは僕を抱えなおし、上下に揺すりはじめた。抵抗できず、やがて脱力し、 銀さんを飲み込んでされるがままになる。
「や…だ、イタイ…ッ」
「ちゃんとつかまれ」
銀さんの肩を抱いて、揺さぶられる。銀さんの腹に擦られ、僕は無意識に先走る。
銀さんが突き上げてくる。何か言ってる。僕の反応を見て喜ぶ。
何だよ、お前なんか死んだ魚のような目してりゃいいんだよ。 嬉しそうに笑いかけるな。
「最低だ…ッ」
僕は精一杯の憎しみをこめて言ってやった。
「最高の愛情表現をありがとうっ」
むかつきます。
ウキウキ原付走らせて、抱きつかせて、二人になろうとする。
いつもだるそうな癖に、僕をからかう時は完全に覚醒しちゃって楽しそうだし、キライだ。お前なんか。
「…ッ!」
その瞬間、痺れるような感覚が来た。
何かいけないもののようで、必死で銀さんの身体にしがみついて我慢する。
「何、どうした新八」
銀さんの声に、心が、体中が感じてる。
「…っ、アッ、アァ、あ、ア、ァん、」
口から漏れたのはほとんど吐息だったのに、銀さんが中で反応したのがわかった。
「イイならイイって言えよ新八」
「ちが…っ、ヨク、ナい…っ」
耳に息を吹きかけてきた。反射的に身体を強張らせる。たまんねえ、銀さんが呟く。
動きが激しくなる。僕はどうでもよくなっていく。
銀さんは僕を追ってくる。 揺さぶられ、突き上げられ、貪欲になっていく。気づけば腰を動かし、快感を追うように目を閉じていた。
「シンパチ、」
僕をよんでる。
銀さんの吐息。体温と、クラクラする感覚。
どちらともなく、唇を寄せた。乾いた唇はすぐに潤った。
汗ばんだ髪も気にせず梳いている。押し付けられ、離れて、見つめて、また触れる。息が出来ない。 息をする暇も惜しい。
熱い。
どうしよう。
わかっちゃったよ。銀さん。
もう何も、考えられない
「!」
憎しみも、悲しさも、愛情も、全部が、あふれでた。
あとには虚しさだけが残った。


僕はドロドロで、銀さんも汗だくで、二人、力を失ったように寝そべった。
息が整うまで、僕らは互いに黙っていた。
「てめー、気づいてはいけないことに気づいただろ…」
「血が出てる、またかよ。どうしようまたかよ! 痛いよ…っ。マジで虐待だよこれ…っ」
僕は銀さんに背を向けるように横を向いた。姉上、万事屋やめてもいいですか。
「コラ無視すんな」
銀さんが僕の肩を掴んで引き戻した。目が合った。僕らは沈黙した。
「…僕、アンタのことやっぱり嫌いですから」
「上等だ。大人は愛とかなしでヤれるんだぞ」
「ああ大人って腐ってますね。ホント脳みそまで腐ってますね。未成年に向かって色々エロい事言っちゃって」
「妄想激しいからって幻聴まで聞くこたねーだろ。ガキはせいぜい手の届かないアイドルでカイてろってこった」
睨み合い。
「…っ」
どちらともなく互いの口を塞いだ。酸欠直前で突き放す。
「言っときますけど…、『僕』だってはっきりわかった以上…、釣った魚にエサはやりませんから」
苛立ちのままにまた唇を押しつけられた。激しく抱き合ってもういいってくらいしつこくして、離れる。
「あのな…、あんあん鳴いてた口が何を言いやがりますかコノヤロー。大人ナメるとあとが怖ぇんだぞ」
ぺろりと唇を舐められた。怯むと、銀さんはちょっと驚いたような顔をして、視線をそらした。
銀さん疲れちゃった、と頭をかいてゴロリと隣に移る。 ジャンプを引き寄せ、団子の包みをあけた。
「ホラ、やっぱりそっち行くじゃないですか! こんな目にあわせといて、最低の礼儀ってもんが、」
喚くと口にみたらし団子を突っ込まれた。
「銀さんの愛だ。よく味わえ」
銀さんは僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。

FIN



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甘く激しく団子はうまい

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