箱の中の憂鬱 八 (銀魂 銀時×新八)
それは甘いものを食べるときに似ている。
「銀…息できな、」
勿体ないから声まで飲み込んでやる。
「ん…う」
優しくするつもりが、気がつけば口腔を蹂躙している。
くたりと力を無くした新八の体を支えて、耳朶を噛む。
腰を下ろし、新八の逃げ場を失くすように、身体を足の間に引き込んだ。
戯れるようにして襟を寛げて、肌を撫でる。びくりと新八が震えた。
「あ、」
新八は緩んだ袴紐に気づいた。ムっとして直そうとするのを引き止める。
指が絡んだら力が抜けた。
ぐいと襟を引っ張って、半身を剥いた。久しぶりの身体を抱きしめた。
「何で戻ってきてんだよ」
頬ずりしながら聞いた。
「お前んち行ったんだぞ」
え、と顔を上げたから、眼鏡を取る。
「どうして」
「新ちゃんに会いたかったから」
「…明日会えるじゃないですか」
「明日じゃ遅ぇんだよ」
「…はい」
新八は顔を赤くして俯いた。
掬い上げるように唇に触れる。
「心をこめてやります。銀さんは新八を気遣ってるつもりで、実は逃げてました。すいませんでした」
顔をあげた新八の頬を撫でる。真っ直ぐに俺を見る。ぼやけた視界でも、俺のことを見てる。いつも。
「もう限界、お前もだろ」
「…銀さん、」
新八の指に、訴えるように力がこもった。
もたれかかるようにして肩に押しつけてくる頬は赤い。怒っているような唇。桃色に尖っている。
「僕…どうしたらいいですか」
浅い呼吸が伝わってくる。もう、怯えている。
「もっかい、約束」
新八の顎を取って、恥ずかしさを隠すように、自分を忘れるように目を閉じて触れた。
ただ抱き合う。温かい。こんな感激ってあったかな。
「銀さんが震えること、ないのに」
新八が言った。
座った新八を後から抱くと、不安そうに俺を振り向いた。
ダイジョウブ、囁いて緊張した体に触れていく。
耳の後ろ、肩におりて、優しく唇を押し付ける。
腰を撫でて腹に手を回す。新八は身を縮めている。
腹から胸に上がって、庇うようにしている新八の腕をどかせた。心臓の音が早い。
しっかりと抱きしめる。震えながら、俺の体温に慣れていった。
うなじに唇を押し当てる。力を失い、もたれかかる身体を横臥させ、背後から寄り添うようにする。
喘ぐような呼吸。胸の先をいじりながら、腰から尻へ愛撫した。
「…ッア、」
尻の割れ目に沿って撫でてやると、恥らうように震えた。
尻から内股へ手を滑り込ませる。新八は抵抗するように足を閉じた。
「新八」
「…、」
言葉にも出来ないで、訴えてくる。
「大丈夫」
「大丈夫じゃな…」
振り向く新八に頬ずりする。
手を前へ伸ばし、まだ力なく垂れている新八のものに触れた。
「ァ、」
全部から逃避するように、俺から目を背けた。
目尻に涙を溜めて堅く目を閉じている。解放したら、安堵したように吐息を漏らした。
背後から、股間に手を入れて玉に触れる。身体が跳ねた。
「やらし…よ、銀さん」
「うん」
新八のをさわさわと揺すった。新八が呼吸を荒くした。
「うんじゃない…ですよう、」
耳が赤くなったと思ったら、全身赤くなってきた。
「銀さん、」
新八は自分のを押さえるようにした。俺の指に触れたから、そのまま指を絡めた。
悪い事を思いつき、そのまま尻の側へ手を引いた。
「あ…っ」
中心が擦られると、新八は声を上げた。
「や…だ…っ」
新八は慌てたように絡んだ指をはなそうと引っ張った。俺の手が新八の前へ移動した。
「あぁ」
新八が泣きそうな声を上げた。
「こんな…、」
「いいじゃないの、気持ちいいんでしょ。手ぇ繋いだまま股間わしゃわしゃするの」
「言わないでください!」
けれどそのうち新八は我を忘れて震え、腰を動かした。俺の手に擦りつけ、快感に唇を震わせる。
「よかったね新ちゃん」
「銀さん、のバカ…ッ。アッ、アぁ、僕、バカみたいじゃないですかァ!」
新八は我を忘れて激しくし始めた。ごしごししていると、手の平に当たる新八の性器が充血していくのがわかった。
「アッ、ああ、アアア、ダメだ、ヘンになっちゃう銀さん」
「ヘンな新八もいいと思うよ。俺はむしろその方が好き」
「銀さんなんか嫌いだ。ちゃんと、こんなんじゃなくて…下品じゃないのがいいんだよ僕は!」
「そもそも君が相当エロい子だからねぇ」
悶える図は普段の新八から想像できない。
「銀さん、して」
泣きながら命令する。ほとんどそれは、俺の前でこんなになっている悔しさで溢れ出た涙と思われた。
「ダメダメ。自分でしな」
「…」
意地悪をするように手を離した。新八は股間を押さえたまま見捨てられて、小さくなっている。
どうして俺はかわいがってやりたい時に、いじめるんだろう。
新八は涙で濡れた睫をしばたかせて、自分でやりはじめた。
まるで悪い事を隠そうとするかのように、声を潜めて。
「銀さんのバカ…」
「チューしてやろうか」
新八を仰向けにして、涙を舐め取る。しょっぱい。
「ふ…」
ぷくりと溢れ出た先走りを指で撫でると、新八は切なげに鳴いた。
「銀さん、」
「ちゃんとします」
新八の手の上から握り、強く擦りあげる。快感のままに新八はぶるぶると震えた。
「あ、あっ、ぁ…。銀さぁん…」
甘えるような声を上げて、すぐに新八は達した。吐き出されたものはやけに濃い。
「お前、もしかしてこの間、やらなかった?」
「…ネコミミなら、なんでもいいわけじゃないって、言いました」
息も荒く、怒った口調で言う新八の頬は上気していた。
「…悪かった」
「もういいです」
ゆらゆらと溢れる涙を全部舐めてやらなきゃいけない。
優しく握ると恥じらった。新八の足を開かせ、その部分を撫でつける。
第一関節まで差し入れた。耳を噛み、体のほかの部分へ気をそらしてやりながら、挿入を繰り返す。
「いっ、」
第二関節まで進んだ。
「なんか…ヤだ。見ないでください」
耐えていた新八が言った。腕を上げて顔を隠す。
「見ないのもヘンだろ」
体を舐めてやった。新八は荒く息をしている。堪えるように噛み締めて、また呼吸を繰り返した。
じっくり時間をかけて、やがて指を増やす。
「っ、」
新八の身体が跳ねた。目じりに涙を溜めて目をつぶっている。
動かしているのは指先だけなのに、身体が熱くなった。
異常な真剣さとしつこさで、新八の中を探った。
「入れるぞ」
「えっ、待っ…、」
新八の身体がまた緊張した。きつい。
「口開けろ」
新八の片足を押し上げて、体を伏せた。新八の唇を塞ぐ。
食いしばる歯をこじ開け、舌を吸い上げると、身体が脱力した。
「う、あぁ…、や、銀さん…きつ、」
受け入れられるというよりは、侵入するというのが正しい。
「やっぱり…もう、…や」
新八は腕で俺の体を突き放そうとする。
「新ちゃんはやればできる子だから」
「今言われたって…嬉しくない、ですよぅ…っ」
溢れ出る涙。身体が強張って俺を拒否する。
「辛いだけで終わらせねえから」
眉を寄せるたびに口を塞いだ。
「んぅ、」
引いて、また進むと、新八が俺の腕に掴まってきた。
「新八」
もう一度。もう一度。
「ん、ん、あ、あっ、ん、」
涙を溜めて苦痛に耐えている。俺にしがみついて、俺に許しを請う。
俺の動きに合わせて新八の身体が揺れる。
「や、ああ、アァ…ッ、やだ…」
俺が支配しているような気になる。本当はそうじゃない。こうすることを許されているのは俺。
「あっ、ア、やあ、ああん」
新八の声が甘くなった。探り出したその場所は、どんどん奥へ逃げていく。
新八の足を抱え上げ、見失わないように、必死で追い続ける。
新八から溢れ出る精液。どろりと押し出され、伝い落ちる。快感に弱い新八が泣いている。震えながら、俺を呼ぶ。
訴える声も、弄ぶ手も、全部愛おしい。
夢中になりながら、どこか冷静に新八の反応を観察していた。
苦痛じゃなく、快感を。
寂しさより、悦びを。
こんな俺に全てを預けてきた新八に、差し出せるものって、他に何がある?
新八は目を閉じて静かに呼吸している。
火照りの収まらない体、汗ばんでいる肌を愛撫して離れる。
新八の手が伸び、俺の指先に触れた。絡んだ指を伝って伝染する安心感。
「銀さん、」
しばらくして、新八が身体を寄せてきた。
震え、伺うように唇が近づいて、一つになる。慣れていない感触。懸命に伝えてくる思い。
苦しそうな表情、震える唇。胸が痛くて、そして熱くなった。
離れ、目が合うと、新八は恥ずかしそうに目を伏せた。
「ありがと…銀さん嬉しい」
手をのばし、頬を撫でる。抱き合うと、鼓動が聞こえた。
今、新八の気持ちがわかる。俺と同じ気持ち。通じ合っている。
あたたかい夜。目を閉じ、静かに意識を手放す。
憂鬱とはしばらくお別れ。
FIN
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恋っていいね。