春のおかず4 (銀魂 銀x新)
僕のおかずはやっぱり、お通ちゃんです。それ以外考えられません。
いつものようにだらだらした万事屋の日常が過ぎていく。
傷は癒え、やっと思うように動き回れるようになった。
「新八ぃ、銀ちゃんがさっきから自分の手ぇ見てニタニタ笑ってるヨ」
「構っちゃ駄目だよ、手は銀さんの親友なんだよ」
「銀ちゃん侘しい男ネ」
「おいそこの青少年ども、解雇されたいかコラ。定春まで、噛むな、ヤメロ! てめえのおしゃぶりじゃねんだよ」
頭から流れ落ちる血を押さえる。
何だかんだ言って、万事屋は僕がいないと駄目なんだ。
「夜の安売りになったら買出し行きますよ」
「じゃあ酢昆布買ってきて!」
「もうええわ、酢昆布は!」
「足出してやろうか?」
銀さんがジャンプを手に取る。
「ただの原チャリの癖にカッコつけないでくださいね…っと」
空いた湯飲みを下げながら言ってやった。
「一度くらい殊勝なことは言えんのか、新八君」
お前こそだ。僕は何も言わず背を向けた。
結局、銀さんが送ってくれることになった。
「行ってらっしゃーい」
「行ってきます」
定春と神楽ちゃんに見送られて原チャリが走り出す。
「スピードあげっぞ」
「えっ?」
慌てて銀さんにしがみついた。
「ちょ、このスピード無駄なんですけど! つかスーパー通り過ぎましたけど!」
「いいのいいの」
銀さんは笑う。
「で、どうしてウチの道場に来てんですか」
「いや、何となく」
銀さんは頭を掻く。
「ガソリン代だって惜しいんですよ。無駄に使わないでくださいよ!」
「…」
銀さんは黙って僕を見下ろす。
「何ですか! 僕の顔に何かついてます?!」
「…いいや」
じっと僕の顔を見て、何か考えている。
「とりあえず、中入れてよ。お茶でもどう」
銀さんは僕の頭をぽんぽんした。
「僕ん家ですよ! 言うことが逆、てか、アンタなんぞもてなしませんよ!」
「まーまー、団子は用意してあるからさ」
「いつの間に買ったんじゃー!」
銀さんは、僕の懐から勝手に鍵を奪って家に上がりこんだ。
「僕、買い物して帰るんで。もう銀さんここ泊まりたきゃ、泊まっていけばいいですよ。
明日の朝、姉上に殺されること間違いないですけどね!」
「何で警戒するの」
「や、警戒するようなことしてるじゃないですか!」
「えっ、いつ?」
しらばっくれるな!
「原チャリで僕がしがみつかずにいられないように無理に飛ばしたり、」
ナイナイ、と銀さんは首を振る。
「誰もいない部屋に二人っきりになったり」
ナイナイ、と首を振る。
「やたら用意がいいし」
「いや、俺はそんなつもりじゃ…」
まだしらばくれるか。
「いっそ、ストレートなほうが僕も…」
僕は上目遣いに言った。
「してえしてえしてえしてえしてえ∞」
「やっぱりじゃないですか! 気分が悪くなりました!」
「今ならねーちゃんいねーしさ。神楽も定春もいねーし。ぱぱっとやって、帰っちゃえば」
押し倒される。
「何がぱぱっとですか! やっと治ったのにヤですよ!」
「つれないなあ、新ちゃん」
「ちょっとまったあああ!」
スパーンと音をたてて襖が開き、押入れから姉上のストーカーが這い出してくる。
「またですか! 家宅侵入ですよ真選組のくせに!」
僕は銀さんの下から抜け出した。
「何だよ、何でお前がいんだよ! いいとこだったのに、新八が起き上がっちまったじゃねえか!」
「お妙さん待ってたらなんだお前ら。誰もいない部屋でいちゃつきやがって! 俺の気持ちも考えろ!」
「いちゃついてません! 何も始まってません!」
「お前ん中じゃまだ始まってもいないんですか! あんな声出してたくせに」
「うぅうるさいっ! つかアンタ、ややこしいからもう帰ってください!」
僕は銀さんの身体を押しやった。
何でもう、僕の周りの大人はこんなんばっかりなんだ!
「お姉さん、今日は出勤なのか新八君」
「シフト代わったって言ってました。あ、言っちゃった」
僕の目線を受け、銀さんは、かぶき町へ向かおうとするゴリさんを捕まえた。
姉上の売り上げにはなるかもしれないけど、たまには解放してあげたいしね。
「何す…ガ…ッ!」
銀さんはゴリさんを速やかに気絶させて庭に投げ出す。真選組の人たちがどうせ拾っていくだろう。
銀さんはぱんぱんと手を払い、くるりと僕に向き直った。
「それでだ、新一」
耳元に手をつく。
「新八です」
「やっと二人になれたことだから…」
「水差されちゃったし、もうやめませんか」
「そんな殺生な話があるか。俺がここまで来るのにどれだけ苦労したと…」
「銀さん、おかしいですよ。どうしちゃったんですか」
「何でおかしいよ」
「だって…」
僕は視線を逸らした。
「僕のことからかってるんでしょう」
「銀さんちょー真面目なんだけど」
「存在自体がちゃらんぽらんなんだから信用できません」
銀さんははぁ、と息を吐いた。
「だって、あの時…団子に行っちゃったじゃないですか。僕の身体、突き放して」
「そこですか! そこですか!! あそこで団子に行くなと俺に言うんですかコノヤロー」
確かにそうだから、僕は俯いた。銀さんの視線を感じる。
「とりあえずこうしてみよう」
眼鏡を取られた。柱に押し付けられ、顎を取られた。
「ん、」
唇が触れると思わず声が漏れてしまった。ぎゅっと目をつぶる。やめようよ、銀さん。
「銀さ、」
ふらふらになってしゃがみこんだ。
「銀さん、なんで、やめ…」
銀さんの手は僕を脱がしにかかっている。
「わかるだろ?」
そういった銀さんの背後に、制服を着た男を見た。
男は僕に目で聞く。
僕は一瞬考え、男に頷いた。男が返事代わりに瞼を一度閉じた。
「銀さん、僕、やっぱり帰ります」
「いや、ちょっと待って新八君? 何…」
間髪いれず、股間を蹴り上げた。同時に男が、銀さんの後頭部を殴った。
「…おやすみなさい、銀さん」
畳の上に転がった眼鏡を拾い、かけなおした。
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8に変態愛な銀さんがいいと思います。