二人と一匹 [4] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
ゾロと、着替えたナミが、テーブルで向かい合っている。
気まずい雰囲気だった。
サンジはペットルームの方でシャワーを浴びて着替えた。
ゾロにコーヒーを、ナミに紅茶をいれて、気配を殺してサーブした。
キッチンへ戻ろうとしたら、ゾロに呼び止められた。
「てめえもここにいろ」
サンジは渋々戻って少し離れたところに座った。
「ゾロには関係ないわ」
「俺たちは許婚だ」
「わかってるわ。単に遊びたいだけ。
ゾロだって好き勝手やってるじゃない。何かっていうと
私にだけ文句言うわね。ロビンとホテルで密会してるって
聞いたんだけど、どうなの?」
「馬鹿かてめえは。取引相手だぞ!」
「わからないわ」
「俺もお前がわかんねえ」
沈黙。
「あの…」
サンジはそっと声を出した。
「お金は働いて必ず返しますから、俺、ここから出てっていいですか?」
「金をやったのか?」
ゾロが険しい顔をしてナミを睨んだ。
「昨日皆を呼んでパーティーだったの。
あなたが前のコックを叩き出したのよ!
サンジくんがいなかったら恥をかいたわよ!
全部、必要経費よ。彼、来た時は一文無しみたいだったけど、
料理の腕は確かだし、先に投資してあげたって構わないじゃない」
「金はいい。出てってくれ」
ゾロが言ってサンジを睨んだ。
「ちょっと雇ったのは私よ?! 行かないでサンジくん!」
どっちもに睨まれて、立ち上がりかけたサンジは固まった。
訴えるようなナミの瞳を振り切ることは出来なかった。
「…確かに、女の子一人の家に住み込みはマズイと俺も思います。
昨日は急だったんで、そのへんの話出来なかったし…」
サンジは言った。
「おかしなことしないようにペットにするんじゃないの!」
ナミはゾロに怒鳴る。
「それにしてもてめーの遊びは性質が悪いんだ!」
ゾロが言い返す。
しばらく平行線だな…
サンジは小さく溜息をついた。もう十一時だ。腹が減った。
「あの、お腹すきませんか?」
恐る恐る言った。
「何か作りますから、お茶でも飲んで休んでて下さい」
二人がガッとサンジを睨んだ。
「お願いするわ。この人の分もお願い。
サンジくんの腕を知ってもらわないとね」
ゾロをちらりと見てナミは冷たく言った。
胃が痛い…。
サンジはプレーンオムレツを二人分作りながら思った。
シーフードサラダは、サラダ菜とトマトで飾られて、
既に冷蔵庫に眠っている。
スープも出来上がって火を止めた。
やっぱいい仕事はそれだけいわくつきなんだよな。
俺みたいな庶民は地道に生きてこそだ。
今度こそ、一発逆転なんて夢を見ずに、堅実に生きよう。
…別に、一発逆転なんて狙ってなかったのにな…。
サンジは肩を落とした。
「よし。いい匂いだ」
サンジは満足して、キッチンを出た。テーブルには
空になったカップが二客。ゾロもナミも姿が見えない。
「朝ご飯…です」
とりあえずカップを引いて、テーブルに料理を並べる。
ナイフとフォーク、スプーンをセットして、ちゃんとブランチ風。
サンジは二人を探してリビングへ出てみた。
「!?」
甘ったるい吐息と、笑いを噛み殺す声。
「あの…」
サンジはそっと覗き込んだ。
二人が絡み合い、ソファに寝そべっていた。
「ああ、ありがと、サンジくん。これからもお願いね」
ナミは口紅を手の甲で拭きながら、体を起こした。
「あ、はい…」
サンジは頭を殴られたような気持ちで、キッチンに戻った。
何だよ、結局はラブラブなんじゃねーか。
自分の分の朝食を手早く作った。
「おい」
スクランブルエッグをフォークで掬って口に入れたところで、
ゾロが呼んだ。
「あ、」
サンジは飛び上がるようにして立ち上がった。
「俺のとこのディナーも頼みてえ。ナミに話通したから、
時々頼むぜ。給料はその度に決める」
「あ、はい。お願いします!」
首の皮一枚だ。
正直、もうリタイヤの白旗は上げている。
出て行きたい。いますぐ逃げたい…気がする。
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