二人と一匹 [6] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
シャワー室から出たら、大きな鏡の前に座らされた。
床には柔らかい毛皮が敷いてあって、心地よかった。
「いい子にするのよ」
「はい、ナミさん」
ナミはサンジに手錠を掛けた。
サンジは両手を前にだらんと下げて、大事なところをさりげなく
かばった。
「深い意味はないの。縛るのとか拘束するのとかって、興奮しない?」
ナミはさらっと言った。
「そうですね、ちょっとイイかもしれないです」
サンジは両手を挙げて、リードをいじった。鏡を覗き込む。
シルバーメタリックに高級ブランドの刻印。ちょっと見ただけでは
チョーカーみたいだった。
「別に叩いたりはしないわ。暴力的なのは嫌いだから安心して」
ナミはウィンクすると、ラタンのドレッサーの引き出しから、
マニキュアと化粧道具を出してきた。
「さあ、ペディキュアしてあげる」
ナミはあぐらをかいて、サンジの左足を自分の足の上に置いた。
サンジはナミの内股の柔らかい曲線を覗き見た。
ワンピースの短い裾が肝心な所を隠している。
変だな、俺…。
いつもなら鼻の下を伸ばすアングルに特別の興味が湧かない。
サンジはナミを見た。真剣な顔で、サンジの爪を染めている。
左足が終わると今度は右足。
優しい匂いがした。触れた部分が柔らかくて温かい。
俺に手間をかけてくれるナミさん…。
嬉しい。大好き。
「サンジくんの足の形って素敵だわ」
ふーっと爪に息を吹きかけながら、ナミは呟いた。
「な、ナミさんの足の形も素敵です」
サンジは我に返り、急いで言った。
「ありがとう」
ナミは笑ってマニキュアをしまう。
両手をサンジの前に差し出す。
開いてみせて何もないのを確認させると、両方を軽く握った。
気品のある動きで右を差し、投げ上げて左で受ける。
白い手が目の前でひらひらと優雅に舞う。
動きをじっと目で追って行くと、最後に右手を開いた。
シルバーの繊細な鎖が零れ落ちる。
「すごい! ナミさん手品出来るんですか!」
サンジは興奮して叫んだ。ナミはにっこりしてアンクレットを
サンジの足首に付ける。
「渇いたわ」
ナミは満足そうに言った。
「じゃあ、じっとして、」
サンジは目を見開いた。ナミはサンジの顎を取って、口紅を持った。
「ちょっと口開けて」
「ナ、ナミさん…!」
サンジは焦って呼びかけた。
「犬!」
ナミが恐い顔で言うので、サンジは従った。
ナミはサンジの唇を赤く塗った。
「ふふ。イタズラしたみたいに描くとかわいいのよね」
ナミは満足したようにサンジを見た。
「見て。すごくかわいいわ」
サンジは横を向いた。鏡に犬のような自分がいた。
リードをつけて、手錠をかけられ、不器用に口を赤く染められていた。
サンジは頬が熱くなるのを感じた。新しい世界に目覚めそうだった。
「ああ、リボンつけちゃいたいくらい」
ナミはぎゅっと抱きしめてきた。柔らかい胸が頬に当たった。
苦しくなった。押し付けられていい気分になった途端、
引き剥がされ、鏡に背中を押しつけられた。
リードも、手錠も、上に固定された。
両腕を上げたまま、身動きが取れなくなった。
「ナミさん!」
「そんな不安そうな顔しないで、」
ナミの目が潤んでいた。近づく唇。
「ん…ナミさん…っ」
ナミのキスにサンジは喘いだ。
「犬。アタシの犬!」
興奮気味にサンジを見る。ナミの唇の周りは、サンジの唇から移った口紅で、
赤くベタベタに汚れていた。
「何も知らないのね、サンジくん…」
ナミは感動で潤んだ目をした。優しく触れるだけのキスをくれた。
これがキスなんだ。胸が熱くなった。
「最高…サンジくん、サンジくん…!」
「ナ、ナミさん…ナミさあん…!」
身動き出来ないままキスするのはもどかしかったが、
ものすごく燃えた。
ナミが焦らすように顎を引くので、必死で唇を寄せた。
「犬のくせに駄目よ、サンジくん。犬はお行儀良くするの」
ナミが甘ったるい声で言って、サンジの唇を撫でる。
「ナミ…さ、」
サンジは入り込んできたナミの指を舐めた。ナミが微笑んだ。
「悪い子!」
ナミは両手でサンジの頬を包んで、もう一度キスしてきた。
上へ固定された腕が痛かったけれど、
サンジはナミに食べられたいだけだった。
ナミの唇をいっぱい舐めて、ナミを喜ばせた。
酸欠になるまでキスしあった。ナミは、サンジをそのままにして、
そばで眠ってしまった。ナミの寝顔を見つめた。
頭を撫でてあげたかったけれど、出来なかった。
ずっとナミの上下する柔らかな体を眺めつづけた。
ナミさん。何でもするよ。ナミさんの為なら。
幸せな気持ちで、眠りに落ちた。
朝、解放されて、固定された腕が下ろされた衝撃で目が覚めた。痛かった。
サンジはそのまま寝そべった。
ナミが下着姿でうろちょろするのを、
毛皮の敷物に半分顔を埋めたまま見ていた。
「ご飯は一時間あとでいいわ」
ナミは言うと、Tシャツにミニスカートを着て、リビングに出ていった。
昨夜の遊戯はまるで夢だったように思えた。
激しくキスを教えられたのに、朝のナミはそっけない。
スーツを丸ごと抱え、裸でペットルームに戻って
シャワーを浴びた。口紅がなかなか落ちなくて苦労した。
排水口に流れていく泡を見つめた。ピンク色の足の爪。
サンジは髪をかきあげて、シャワーを出た。
体を拭いて、まだビリビリする腕を回した。服を着て、
ベッドに腰掛けて靴下を履く。
もう昨日の出来事は見えないところへ隠れてしまった。
靴を履いて、キッチンへ。
ナミはソファに掛けて雑誌を読んでいた。
今日もおいしいものを作ろう。
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