二人と一匹 [7] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
毎日があっという間に過ぎた。
週に三回来るハウスキーパーのボン・クレーが帰ってしまうと、
部屋は静かになる。
昼下がり、キッチンで献立を考えた。集中力が散漫で、
すぐに違うことを考え始めた。
思い出すのは昨夜のこと。サンジは左の尻に手を当てた。
タトゥーシールを貼られていた。黒い薔薇だ。
ナミはお揃いだと言って、シールをサンジに渡して背中を向けた。
彼女の希望通り、お尻のすぐ上、腰の当たりに貼った。
ナミに引かれて、さんざん四つん這いで歩き回った。
ナミを背中に乗せた。尻を叩かれた。軽くペンペンされただけだったけれど、
最後には赤くなっていた。ナミが腫れた尻にキスをした。
ご褒美にイチゴを貰った。ナミの指から食べさせてもらった。
本当の犬みたいに、皿の中のミルクを舐めた。
手錠をかけられ、ナミに抱かれて眠った。
ナミとの夜は何もかもが刺激的だった。
夕方、そろそろ夕飯の支度に取り掛かろうとしていたら、
インターフォンが鳴った。
廊下に出たら、鍵をあけて入ってきたのはゾロだった。
「おい、俺の家でパーティーだ。頼むぜ」
「え?」
急で、思わず聞き返した。
「迎えに来たんだ。あっちにナミもいる。早く用意しろよ。行くぞ」
「ちょ、ちょっと、待った」
サンジはキッチンへ戻り、急いで包丁をケースに入れた。
「今日の客も前と同じ…?」
サンジは聞いた。
「? ルフィたちのことか?
あいつらも来るけど、もっと年寄りも来る」
「年寄り?」
サンジは顔を上げた。
「ま、年寄りは言い過ぎか…オッサンたちの口に合うものがいい」
「…」
サンジは黙って考え込んだ。まだイメージはわかない。格式のある
コース料理がいいのだろうか…
「食材は山ほど買い込んである、心配すんな」
ゾロがポンと肩を叩いた。
荷物を持って部屋を出、エレベーターに乗り込んだ。地下まで下りて、
ゾロの車に乗る。見るからに高級そうな深い緑色。
走りの滑らかな車だった。
「その、どういう人たちだ…? ちゃんとしたコースがいいのか、
ビュッフェでいいのか、」
サンジは、運転席のゾロを見た。
「単なる内輪のパーティーだから、難しいこと考えなくていいぜ。
どうせオッサン達は酒で流し込むような食い方しかしねえ」
前を向いたままゾロが答える。ほっとして、ちょっとガックリした。
「気が抜けたか?」
ゾロがアクセルを踏み込んでニヤリと笑った。
ナミは仕事を終えたばかりのサンジを、ゾロの寝室に招き入れた。
大人数のディナーを作ったので疲れていた。
遠慮して、それから嫌がったが、ナミに押し切られた。
ベビードールの黒いレースの下から、太股が見え隠れした。
オレンジ色の髪は黒いリボンで二つに結んでいる。
ナミのセンスはサンジには特異なものに見えた。
昼間は普通なのに、夜はゴシックでパンキーだ。
無邪気な少女の笑顔と、恐いような束縛の感覚。
どちらもに、心地良くなりはじめていた。
ナミはゾロのクロゼットを開け、引き出しを覗きリードを選ぶ。
サンジの首に付ける。腰に巻いたタオルを取られた。
素っ裸で四つん這いになり、ナミの後を追った。
いつものように散歩ごっこ。
「ナミ、」
シャワーから出てきたゾロが呼んだ。
「またかよ」
眉を潜めてサンジを見、ナミに言った。
「いいじゃない。ゾロがサンジくんを呼んできたのよ。人に
迎えにやらせればいいのに、自分で迎えに行って」
「知らない奴が行って行き違いがあったら困るだろ。
急にミホークが訪ねてきたんだ。マズイもんは出せねえ」
「何よ、嬉々として出てったくせに」
ナミがツンとゾロに背を向けた。
「かわいいわ、サンジくん」
ナミがしゃがんだ。頭を撫でられた。ゾロの表情が変わった。
血の気が引いた。ゾロがナミからサンジのリードを奪った。
「ちょっと、何よ!」
「あの、俺、一人で部屋に帰りますから」
必死で懇願する。やっとこの間の口の傷が癒えたばかりだった。
「てめえは大人しく隅にいろ、ペットらしくな」
首を引っ張られてサンジはしょうがなくついていった。
窓際に座らされる。
ゾロはサンジに手錠をかけて、タオルで猿轡をかませた。
手錠の鎖に引き紐を通して引っ張り上げ、カーテンレールに縛った。
座ったまま、手だけ上に固定された。
「うう、」
訴えるようにゾロを見上げる。
「ゾロ! 可哀相よ」
言いながらナミはそれ以上動かない。この間みたいにちゃんと
かばって欲しい。サンジは訴えるようにナミを見た。
ゾロの分厚い手の平が、サンジの頬を捉え、自分を向かせた。
「いいか。ナミに命令されても脱ぐな!」
鼻と鼻が触れ合うくらい間近で睨まれた。
サンジは精一杯頷いた。でもタオルを剥いだのはナミさんだ。
言いたくても言えない。
「…童貞男」
「!」
ゾロの声はナミには聞こえなかっただろう。
それでもサンジは真っ赤になった。
「ナミの声聞かせてやろうか」
ゾロはサンジの足を割り開いた。
サンジは呻き声を上げて必死にもがいた。
ゾロはサンジのものを強く握り締める。
「うううう!」
太股が緊張した。浮き上がった内股の筋肉を、ゾロの指がなぞった。
快感に似たものが走って、中心が疼くのを感じた。泣きそうになった。
「ゾロ!」
ナミがそばに来て責めるように言った。ゾロが振り向く。
その手でナミの髪の黒いリボンを引っ張った。髪の片方が崩れる。
「ちょっと、何するのよ」
ゾロは黙って笑い、リボンでサンジの根元を縛り上げた。
ナミがそれを見て、少し意地悪に微笑むのをサンジは見た。
「ちょっと…! もう苛めないで!」
ナミがまだ何かしようとするゾロの手を遮る。
「お前は俺以外の男には優しいな」
ゾロが立ち上がった。
「!」
不意にナミを抱き寄せて唇を吸い上げる。
サンジは、あ!と叫んだが声にならなかった。
「駄目、駄目よゾロ」
言いながらナミが身を任せる。
「サンジくんが見てる」
「あいつはペットなんだろ」
ゾロの手が、巧みに脱がせていく。ナミがベッドに体を預けた。
ナミを抱きしめながら、ゾロはサンジを見て、笑った。
俺に、見せるつもりなのか。
サンジは体が震えるのを感じた。吐きそうになった。
もう何十回だって、もしかしたら何百回も、
ゾロとナミさんは寝てるのかもしれない。
それでも、目の前で見るのは嫌だ。
サンジは俯いて堅く目を瞑った。
早く終われ、早く終われ、終わってしまえ!
ナミの甘ったるい声で顔を上げた。
サンジの中心は存在を主張したがっているのに、
ナミの黒いリボンが戒めている。
ゾロ。なんて奴だ。畜生。ナミさんも同罪だ!
サンジは顔を上げて二人を睨み付けた。もう目を逸らせなかった。
サンジの存在なんてすっかり忘れたように、ベッドの上で
喘ぐナミをずっと見ていた。
苦痛に涙が溢れた。別に何てことはない。アダルトビデオを
生で見てるだけだ。何度もそう思おうとした。
だけど駄目だった。
わがままで意地悪で、卑猥なお姫様。
ナミの体は綺麗だった。爪先まで張りつめて、シーツに波を描いた。
ゾロはナミの体を知り尽くしていて、荒々しくて、
オスなのだと、妙に納得させられた。敗北感と絶望感。
サンジは呻いた。中心がどうしようもなく疼く。
ペニスを擦りたかったけれど出来なかった。
自然と揺れてしまう腰を情けなく思った。
俺は犬なんだ。繋がれて、飼い主が俺を見てくれるまで、
待ってなきゃならない。
涙が出た。ペニスがどうにかなってしまいそうだ。
ゾロが、サンジを見下すように眺めた。
精一杯睨み返すと、鼻で笑ってナミの柔らかそうな胸を揉んだ。
ナミの顔は見えない。ゾロはナミに何か言っている。ナミが笑った。
ムカつく野郎だ。俺もしたい。俺もしたい。
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