二人と一匹 [9] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)

ゾロの朝食が済み、キッチンに食器を引いてくる。 袖を捲って、水を出そうと手を伸ばしたら、 いきなり顎を取られた。
「!」
唇を押し付けられる。ゾロ。
「ごちそうさん、」
唇を舐めながらゾロはニヤリと笑い、出勤していった。
「…クソ!」
サンジはゴミ袋を蹴り上げた。 気配は感じなかった。いつのまにキッチンへ入ったのだろう。
気の抜けた所を不意に襲われる。怒る間も与えないで逃げてしまう。
あの調子であっちこっちの女に手を出してるに違いない。
水を流し、何度もうがいした。ついでに顔も洗った。
昨日の朝と晩、それに今朝で三回。
ということは今夜もやられるかもしれない。
今度は奴の舌を噛み切ってやる。
サンジは鋭い目をした。
気合を入れろ、サンジ。
今夜はナミさんが帰ってくる。 うまく行けば回避出来るかもしれない。
ナミさんの所に戻ったら…、また犬になる。
「…」
食器を軽く流し、食器洗い機へ入れた。




ゾロと同じ時間に、ナミも帰ってきた。駐車場で会ったらしく、 一緒に上がってきた。
二人に軽い夜食を出して、ゾロの部屋を出る。
「どうしたのサンジくん、」
帰りがけ、ナミが赤いスポーツカーを運転しながら聞いた。 もうすぐ日付が変わる。
サンジは黙っていた。
玄関まで送って来たゾロは、 サンジが警戒を解いた途端、尻を撫で上げた。 ナミは気づかなかった。 サンジが睨み付けると、ゾロは俺の方が一枚上手だとでも 言いたげな目で笑った。ムカついた。
「何で俺をあんな奴のところに置いてったんですか」
サンジは低い声で聞いた。
「だって…一人で置いておけないもの。あなたも臨時収入が貰えて 良かったでしょう?」
「そんなの貰ってねえ!……あ、」
サンジは腰を上げて尻ポケットを探った。
「…」
小切手というのを初めて見た。予想よりいい金額。
「あら、気に入られたみたいね。今度はもっとふっかけようかしら…」
ナミの呟きに振り返った。
「やあね、ただの仲介料のことよ。 私たちのセックス見ながら喘いでたでしょ。 いいツラだってゾロが言うから、ちょっと見せびらかしたくなったの。 派遣、ていうの? 流行ってるらしいじゃない」
「…」
頭に血が上った。どういうつもりだ。
「俺は…っ、ナミさんに雇われたけど、 出張ホストになった覚えはねえ!」
「ごめんなさい。今度からちゃんと言うから。ね、今夜は一緒に 寝ようね、サンジくん」
ナミが笑って流してしまった。
「…」
もう逃げ出そう。
車が止まったら、逃げよう。
そう思ったのに、ナミは駐車場でサンジの頬にキスをした。
車を降りたら腕を組んできて、柔らかい胸が押しつけられた。
サンジは部屋まで連行された。




シャワーを浴び終わったら、ナミがペットルームの ベッドに白いベビードールで寝そべっていた。
「今夜は…犬にはなれないです、ナミさん」
サンジはTシャツにトランクス姿で、頭を拭きながら言った。
「今日は違うわ。犬になんかならなくていいの」
ナミが起き上がった。ベッドから綺麗な足を下ろし、 立ち上がり、近づいてくる。
「…サンジくんのエッチな声が聞きたいわ」
「ナミさん!」
「経験なんて関係ないの。ゾロの言うことは気にしないで」
サンジは赤くなった。聞こえていたんだ。あの時。
「本当はあなたが心配でしょうがなかったのよ。私が悪かったわ。謝る。 ねえ、どうしたら許してもらえる?」
ナミは澄んだ瞳で、サンジを見上げた。 あんな風にゾロに抱かれていたくせに清純に見えた。ドキドキした。
「やめて下さい…ナミさん。もういいです、わかりましたから、 今日は…」
ナミさんが俺を見てる。
サンジは上目遣いに見つめるナミを見た。こんな表情初めて見た。
いや、騙されるな。
サンジは、ナミの意地悪な視線を思い出して、壁に張りついた。
「どうして脅えるの?」
ナミの手が、サンジの頬を包んだ。
サンジは無言で首を振った。 ナミの胸が、もう触れてしまう。出来るだけ身を縮めた。
「サンジくん…」
ナミの柔らかい胸の感触が、押し付けられた。抱きしめられた。
「ベッドへ行きましょう、ね?」
ナミが首を傾げた。しょうがなく従った。
「いいのよ」
ナミが言ってサンジの胸を撫でた。サンジはがちがちになって ベッドへ横たわっていた。
「駄目です、俺、駄目です」
喉がカラカラだ。
「ゲイじゃないんでしょう?」
「違います! 勘弁して下さい」
サンジは急いで否定した。ナミが笑った。
「私じゃ駄目ってこと?」
ナミが優しく聞いてきた。
「わかんないです、すいません」
サンジは短く答えた。
こんなに可愛い子がいいって言ってるんだ、 ヤっちまえよ。馬鹿か、何で駄目なんだ、クソ。
心でサンジを煽っている声がする。
「…っ」
サンジは起き上がって、ナミに馬乗りになった。
「サンジくん…」
ナミが呟いて目を閉じた。
ゆっくりと、キスをした。震えていた。ナミも震えている気がした。
ベビードールの上から胸をわしづかみにした。柔らかくて、温かくて、 アア、と思わず声が出てしまった。ナミが笑った。 サンジは手を引っ込めようとした。ナミの手が引き止めた。
「ナミさん…!」
顔を胸の谷間に埋めた。素早くレースの裾をまくって、むしゃぶりついた。
「子供みたいだわ」
ナミが呟いて、まだ濡れているサンジの髪を撫でた。
「ナミさん…ナミさん、」
ナミの胸に甘えたまま、ずっと呼んだ。
頭の中に、ゾロとナミが絡み合うシーンが回っていた。 中心に熱が集まった。耐えて耐えて、顔を上げた。
ナミは誘うようにサンジを見て、ドロワーズを脱ぎながら、寝返りを打った。
細い腰に、黒い薔薇。
「!」
サンジの尻のそれが、ひりひりと痛み出した。叩かれた時の痛みを 訴えるように。
俺はナミさんのペット。気まぐれにキスをしてもらい、そばで眠る。
ナミはくるりと仰向けに戻った。
「サンジく…」
「…すいませんナミさん…!」
サンジは大事な所を抑えたまま、シャワー室に逃げた。


ゾロとナミがセックスしている。
睦み合いながら、サンジを見ている。キスをしている。
リードを引っ張って、尻を叩いて、ナミが笑う。誉めてくれる。
俺は犬。
ゾロの手が擦り上げた。かたくなった。
やめろやめろやめろ。
シャワー室の壁を叩いた。
手の中に精液が溢れ出した。サンジはそれを見た。
ゾロが俺の顔に擦り付けて、キスをした。
「…っ」
頭からシャワーを浴びた。



ナミさんに拘束される



サンジは喘ぐように呼吸した。



ゾロに弄られる



「アア」
フラッシュバックのように、交互に二人がサンジを見つめる。
またかたくなった。
「ア…アア…ッ」
堪えるように、必死で握り締めた。



朝までシャワー室にいた。枕元の時計が鳴るのが響いてきた。六時半だ。
部屋に入ったら、ナミはいなかった。 クロゼットから、新しい下着と、服を出して着る。
ナミが投資してくれなかったら、これも買えなかった。
サンジは唇を噛んだ。



キッチンへ立った。変な咳が出た。シャワー室で冷えたのだ。
サンジは予備の布巾をマスク代わりにした。ちょっと怪しくて笑えた。
「おはよう、サンジくん。あら、どうしたの?」
ナミはいつものナミで、いつものように振る舞った。 朝食を運んできたサンジの格好を見て笑った。
「おはようございます、ナミさん。何か風邪引いちゃったみたいで」
サンジもいつものように、ちょっとおどけて答えた。
「風邪? いけないわ、無理しないで休んで。ゾロを呼ぶから」
ナミが電話を取る。
「えっ」
サンジは嗄れた声で叫んだ。
「知識は持ってるの。医学部卒の実業家よ、彼」
受話器を耳に当てたまま、ナミは言った。
「いい。いいです、寝てりゃ治る。ほんとにすいません、ナミさん」
サンジは頭を下げて、部屋へ逃げ込んだ。
そのままベッドに倒れ込んだら、ナミの匂いがした。
枕元が湿っていた。
…ナミさん、
無性に泣けた。




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