二人と一匹 [12] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
二本ぶっ続けでDVDを見て、ナミが気分が悪いと言って
寝息をたてはじめた。
クレジットを半ばまで見てゾロが不意に立上がった。
ナミを抱え上げ、部屋に運んでいく。
それを合図のようにしてサンジはDVDの電源を切り、
欠伸をしながらテーブルのゴミをまとめた。くしゃみが出た。
「体が冷えてる」
ゾロの声。温かい手が、背後からシャツを捲り上げ触れた。
「やめろ、」
振り向きかけて、制される。
「今日はペットごっこはナシだったのか?」
ゾロに聞かれて、サンジは頷いた。
「そこはもういい。楽しもうぜ」
ゾロの腕が、抱きしめるように腹に回された。
「よ…良くねえよ、匂いがこもっちまう、」
サンジはやっとそれだけを口にした。ゾロは溜息を一つ吐いて、体を放した。
テーブルのグラスとワインの空瓶を取り上げ、キッチンへ入っていった。
テーブルの上を片づけて、キッチンへ行くと、
ゾロがグラスを洗っていた。
ゴミ袋をダストシュートに入れると、ゾロが覆い被さってきた。
「もういいだろ、」
「やめろ、何考えてんだ」
ゾロの腕を払う。
「この間の傷はもう治ったか?」
言いながら、ゾロは尻に手を回して撫でてきた。
「何でそういう言い方するんだ、セクハラって知らねえのか、
コラ」
サンジはゾロの手を引き剥がした。
「言葉を選べよ。ナミさんにもその調子なのか?」
「いや、ちゃんと気を使うぜ、多少はな。でもあいつもエロだから
通じるし」
ゾロが笑う。ゾロの唇はもうそばにある。
ゾロの体は熱かった。酔いが覚めて冷えてきた素肌を撫で回す。
「男相手に盛ってんじゃね…」
少し声を大きくして怒鳴ったつもりが、ゾロの唇に吸い込まれた。
「ナミさんがいるのに何考えてんだ!」
「ナミがいるからスリルあんじゃねえか」
ゾロがニヤニヤ笑いながら、サンジをペットルームに連れ込んだ。
「ナミとはどうなってんだ?」
服を剥ぎ取られベッドに押し倒された。ゾロは服を着たまま膝をついて、
サンジの体を足の間に挟むようにし、見下ろした。
「うまくいってるさ。ナミさんと俺は心の絆で結ばれてるからな」
「嘘つけ。ナミ泣いてただろ」
ゾロが言った。
「…こんなになっちまった俺に何が出来るんだ!」
サンジはゾロを睨んだ。
「俺は犬なんだ。今更ナミさんが恋焦がれて俺を見ようと、
もうどうしようもねえじゃねえか!」
サンジはゾロを押しやって、背を向けた。
「この間はあんなこと言ったけど…もたねえ」
小さく呟く。ゾロが来るまで、サンジは必死で耐えていた。
均衡が破れるのが恐かった。
ゾロが溜息を吐いた。
「…えらく安請け合いすると思ったら、
何もわかってなかったってことか」
ゾロが闇に呟く。うっせ、胸の痛みを堪えながらサンジは吐き捨てた。
「…お前にとって俺は何なんだ?」
サンジは背を向けたまま聞いた。ゾロはもうわかっているだろう。
だから自分も知りたい。
「…俺はお前のこと認めてるぜ。だからこうするんだ」
「ちょ…っ」
中心を掴まれてサンジは身を屈めた。
「やめろ! ヤメロ! 離せちくしょう!」
ゾロは冷ややかに笑った。
「お前の体は俺が始末してやる。満足だろ?」
「何言ってんだ、クソ…ッ」
ゾロの手を必死で引き剥がそうとした。ゾロの手は、サンジのものを
捉えたまま動かない。ある意味、擦られるよりも感じる気がした。
そのことを意識するとすぐに体が反応し始めた。
「クソ、」
コントロールのきかない快感に苛立った。涙腺がすぐに緩んだ。
不意に耳元に噛み付かれてサンジは跳ねた。体が悦んでいた。
「イヤダ…!」
「お前は男だ」
ゾロが低い声で囁いてきた。
「いいか、男なんだ」
「もうやめてくれ、」
「ここをこうされたら、嫌でも勃っちまうんだ」
「アア…」
ゾロが擦り上げ、胸を撫でてきた。
「普通の男は、そういう風に出来てるんだ」
「お前に、勃起してんじゃ、ねえからな…!」
甘い息を吐きながら、やっと言い返す。口から出てくるのは、
嘘ばかりだ。その嘘をわかってくれるのはゾロだけだ。
「そうだ、俺じゃねえ。これは男の機能だ」
「ゾロ、」
懇願するように呼ぶ。
「お前は男なんだ。ちゃんと、好きな女を抱けよ」
「ア、アア」
あられもない声が出た。口を塞ぐように腕を噛んだ。
ゾロがすぐに腕を掴んで引き剥がした。
「口ってのはな、我慢する時に使うもんじゃねえ」
口から鳴咽が漏れた。いやらしい声が混じり、吐息が
部屋に響く。ゾロの指先が、頬を撫でた。
「味わう為にあるんだ。ナミとキスくらいはしたろ?」
サンジは泣きながら頷いた。
「こうするんだ」
最初に唇を奪われた時も、ゾロは優しかった。
酔うほど唇を味わって、ゾロの手に放ってしまうと、
ゾロは手早く始末してベッドを下りようとした。
「待て、」
「俺はソファで寝る」
「寒いんだ、ここにいてくれ」
サンジは言ってから背を向けた。バカなことを言ったと思った。
「…ナミさんもお前も、優しすぎるんだよ。俺はお前達の間を
壊すかもしれねえ。そんなことしたくねえ」
「サンジ、」
ゾロはあまり俺の名を呼ばない。サンジは目を閉じた。
次の瞬間、ゾロが激しく抱きしめてきた。不意に離れたかと思うと、
素早くシャツを脱ぎ、ジーンズも脱いで、サンジの体に覆い被さる。
サンジは必死で枕を噛んだ。
激しいセックスで壊されてしまうんじゃないかと思った。
あの日のナミの代わりに、サンジはゾロとベッドにいた。
「ああ、ああ、アアア」
ものすごく感じた。俺は抱かれてる。ゾロに犯されている。
ナミさんを裏切ってる。
「駄目だ、俺、駄目だ、」
サンジは口走った。ブレーキのきかない車が、坂道を下りていく。
「てめえ最高だ…、」
ゾロが肩で息をしながら囁いてきた。どちらともなくキスした。
「んん、」
言葉を言う間もなく舌を絡めた。
「あああ…っ」
ゾロの体は熱かった。獣になった気がした。サンジは満足した。
恍惚として、しばらく現実に戻れなかった。
二人でシャワーを浴びた。激しく相手の体を確かめ合い、
抱き合って所有し合い、キスで会話した。
ゾロはサンジの手にキスをした。
うまい朝飯が食いたいと言った。サンジは笑った。
ゾロをリビングへ送り出して、サンジはベッドへ潜った。
ナミの涙と、ゾロの匂い。サンジのベッドに染み付いた、二つの愛。
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