二人と一匹 [13] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
ゾロとナミを見送って、サンジは
朝食後のテーブルを片づけ始めた。
いつもなら、食器洗い機へ放り込むところを、自分の手で洗う。
考え事を避けたい時は、体を動かすのがいい。
一昨年死んだジジイの部屋には、色んな本が揃っていた。
その一冊に書いてあった言葉だ。
買い出しに行こう。そうだ、ギンに何か差し入れてやるか。
サンジは手を拭いて、冷蔵庫を開けた。残り物のポテトサラダに、
ベーコン。コーン缶の残り。ちびた野菜をかき集めてピラフを作る。
集中しているつもりで、気がつくと溜息を吐く。
気にしない振りで、四度目に息を吐いた時、サンジは手を止めた。
「…クソッ」
サンジはフライパンの火を止めて、皿に盛った。
ごめんな、ギン。ちょっと香ばしいかもしれねえ。
目を伏せてキッチンからベランダへ出た。
風が冷たくなっている。他のことに気を取られて、気づかなかったのだ。
薔薇の模様があしらわれた柵に腕をついて、タバコに火をつける。
ふー、と吐き出して、街を見渡す。
公園、あのへんだったよなあ…。
サンジは野宿生活を思い起こした。
死ぬ気になれば、戻れねえこともねえ。
だけどもう、いい暮らしにすっかりハマっちまったし…。
雲が流れていく。キレイな青空。
ここからの眺めは、ちょっと気に入っている。
高級住宅街の、上からの、見晴らし。
風呂にも入れて、好きな仕事が出来て、金がいっぱい入る、うまい話。
金と居心地を天秤に掛けた。
「…」
これから冬が来るから、やめるなんて言えねえよ。凍え死ぬなんて嫌だ。
居心地悪いのは確かだけど、ナミさんの気持ちに甘えるしか…。
サンジは唸った。良心が抗議している。
大体、ゾロが悪いんじゃねえか。俺に手を出したりするから…。
いや、ナミさんが置き去りにしなければ…。
そもそも、あいつらのセックスなんか見ちまったのが…。
いやいや、俺が繋がれたのが悪かったか。
「アチッ!」
サンジは急いでちびたタバコを捨て、靴でもみ消した。
そっとつまんでキッチンへ入り、灰皿へ落とす。
水で流してもまだ熱い。痛い。ペロリと指を舐めた瞬間、
ナミの指先をしゃぶったのを思い出した。
反射的に目が潤んだ。いやらしい気分が胸を切なくさせる。
サンジは視線を落とした。
ナミさん言ってたじゃないか、遊びを共有してくれる人が欲しいって。
ナミの涙を思う。必死で打ち消した。
ナミさんの恋人はゾロなんだ。俺はただのペットだ。
俺は犬だ。
「…」
蛇口から溢れる水でもう一度手を洗う。用意して、部屋を出た。
「よう、ギン。ケータリングだ」
ギンが立ち上がり、表情を明るくした。
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