二人と一匹 [18] (ワンピース パラレル ゾロ ナミ サンジ)
「で、ここが厨房ね、サンジくんの希望を出来るだけ取り入れてもらった」
ナミに連れられて奥へ入る。真新しいシンクやオーブン、冷蔵庫。
ピカピカに輝いて、自分が映っている。レストランの厨房なんて久しぶりだった。
ここが三週間後にはうまい匂いでいっぱいになるのだ。
俺の、レストラン。
夢の店は、ナミとゾロの企画に乗せられた形で、今、現実になろうとしている。
「来月には、あそこでみんながサンジくんの料理を食べてニコニコしてるわよ」
ナミが内装工事中のフロアを指す。
抑え目なピーチピンクを基調とした壁、天井は鏡張り、
繊細な黒ラインで邪魔にならない装飾が描かれ、
掛けているお客の姿を縁取って絵画のように映す。
ナミがデザインしたクイーンアンスタイルのテーブルと椅子は、来週運び込まれる。
「お客がいっぱい来るように、俺がんばりますよ」
ナミが笑顔で頷いた。
口コミで客はどんどん増えて、取材が来るほどにまでなった。
最初のうちは、忙しくてもナミの部屋に寝に帰っていたが、
今は店により近いゾロのところで寝起きしている。
夕食を食べにくるナミ、ゾロと一緒に、クローズした店の奥でこれからの展開を話し合った。
季節ごとに新しいメニューを考え、内装もそれに合わせてナミが少しずつ変えた。
「じゃ、また来週、」
ナミが言ってドアを閉めた。
エレベーターを降りてナミのマンションを出、表で待っていた深緑の車に乗り込む。
「ちゃんと送ってきた」
ドアを閉めると車が動き出した。
「あー、眠い」
サンジは言って助手席のシートに埋もれるように体を預けた。
ゾロは無言で運転している。いつからか、黙っていても間が持つようになった。
サンジは目を閉じたまま、考えた。明日の夜は、お客の女の子とデート。
仕立てのいいスーツに馴染んできた革靴。おいしい料理に、女の子へのプレゼント。
花束、スカーフ、香水に指輪。彼女の喜ぶ顔が嬉しい。
一流ホテルも予約バッチリ。もう逃さない。
金があるって、いいなあ。
幸せに息が漏れた。
「何だよ、寝てんのかと思ったら、」
ゾロの呟きに、目を開ける。
「うっせえな。幸せに浸ってんだよ」
ゾロが笑うように息を吐いた。時計は午前二時をすぎている。通りは車が時折すれ違うだけ。
「…お前さ」
「ん?」
欠伸を噛み殺しながら顔を向けた。
「最近かなりお盛んみたいだが」
「…」
後ろめたくなるのが嫌だ。何もかも、ナミとゾロのお陰だと知っているから余計に。
「好きな女を抱けっつったのはお前だろ」
サンジは信号を軽く睨んだ。
「ま、舞い上がりたくなる気持ちはわかるけどな」
「舞い上がってねえよ、別に」
少し、ムキになった。そんな響きを持った気がした。
「仕事もうまくいって、自由な金が増えりゃあ女も欲しくなんだよ。
わかってるから言ってんだ」
サンジは黙る。
「お前あからさまなんだよ。店の客でもいいけどよ、もうちょっと気をつけろよ」
「何が」
「女のにおいをプンプンさせてナミの周りをうろつくな」
「そんなことしてねえ!」
「わかるんだよ。してなくても。気配が」
「…前みたいに腐ってろっていうのか?」
「そうじゃねえ。…ったくどう言ったら、」
「じゃあ、はっきり言わせてもらうけどな。俺はナミさん以外なんてどうでもいいんだよ。
てめえなんか欲しくもねえ。だけどてめえに反応するし、ナミさんの犬でしかねえんだよ。
だったら俺の性欲はどこで満たせばいいんだよ!」
一気に吐き出したら、今度はゾロが黙った。
「お陰さまで童貞卒業したら、何だかいい感じに自信もついて、力も抜けてよ、
カリスマコックだなんて名前もちっと知れてきた。女の方から寄って来るんだ。
本気になって散々貢いでも結局はポイ捨てだ。でもまた別の子が寄ってくる。
どうしてだかわかるか? 俺は金の首輪をしたペットなんだ。
ペット以上のことなんて、誰も望まない。
たまに運良くベッドへ行けたからって、満たされるわけでもねえ。
彼女たちにとっちゃ、セックスなんてカンタンなものなんだから。
俺の金で気持ちよくなれれば、あとはどうでもいいんだ」
そこまで言った時、マンションの地下駐車場に着いた。
「お前が泣いてんのなんか、久しぶりに見た」
ゾロが静かな声で言い、瞼に手を伸ばした。
「泣いてねえよ、タコ」
払うと、ゾロは頬を撫でた。
「俺たちと出会って、後悔してるか?」
「え」
ゾロは唇に触れてきた。体が冷えるまでそうしていた。やがて体温が離れる。
「…全然嬉しくねえんだよ。男の唇は柔らかくねえし」
手の甲で唇を拭く。
「…軽々しくして損した」
ゾロが車をおりながら自嘲気味に言った。
「何だよ」
シャワーを浴びて一服し、まさにベッドに横たわろうとした時、ゲストルームにゾロが入ってきた。
「愛のないセックスがカワイソウだからよ」
ゾロは笑っている。
「チ」
自己嫌悪で舌を打つ。激昂したからって、何もかもぶちまけてどうする、俺のバカ。
髪を拭いていたタオルを投げ捨てる。
「てめえに言われるとよけい腹が立つ」
ゾロはそっと首筋に触れてきた。微かな感触はそのまま胸の上をおりていく。
この男相手にトランクス一枚だとあまりに無防備だ。
「触んな。出て行けよ」
ベッドに上がって、はねつける。
「むなしくなる相手なんかと寝るな。女なら誰でもいいって態度だから、
そんな女が寄ってくるんだろ」
ゾロがベッドに手をつく。
「俺のせいかよ」
「お前のせいだ」
ゾロがベッドに上がってきた。
「!」
中心を掴まれる。サンジは震えた。
「何だよ、急におとなしくなりやがって」
ムカつくのでゾロを睨みつけた。
「…口でしてやろうか?」
黙ったままでいた。下着を脱がされる。抗わなかった。ゾロがシャツを脱ぐ。
割れた腹筋があらわになった。
「…相変わらず凶悪な体だな」
ゾロは軽口を笑って聞き流した。静かに顔を伏せた。
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