Private Blue V-2 宿には当たり前のようにダブルの部屋しかなく、 熱を出しているらしいサンジが、隣りでうなされている。 同じベッドくらいどうだっていい。寝てしまえるならば。 しかし眠れない。サンジの状態が気になるし、 夢を見ているのか、時々死にそうな悲鳴を上げる。 寝入り端にやられるので、眠るタイミングを失っていた。 大体、まだ十二時前だ。眠れるはずはない。ゾロは自分を慰めた。 昼間、サンジの計画を聞いて金を受け取ってから、 ちょっとした興奮状態に陥り、熱に浮かされたように 無我夢中だった。 「う、」 サンジが目を覚ました。首に手を当てて、瞬きを繰り返す。 「俺が外した」 ゾロは枕元のサンジのネクタイを掴んでみせた。サンジが納得したように頷く。 眉間に皺を寄せたまま、起き上がり、トイレへ行った。 しばらくしてシャワーの音がし始めた。 「オイ、」 ゾロはシャワー室へ入った。脱ぎ捨てられた服。 「今日はよせ」 カーテンの向こうに声をかける。 そんなこともわからないのかとゾロは呆れた。 「傷は濡らしてねえ」 サンジの声が返ってきた。恐ろしく暗い声だった。 「浴びねえと耐えられねえ…」 シャワーの音が邪魔だったが、辛うじて呟きは聞き取れた。 「一日くらい、死ぬわけじゃねえ」 ゾロが言った。放っておいてシャワー室を出ようとする。 「あいつが俺の体を舐めた」 「あ?」 「ヴィンセント…」 サンジの声が憎しみを込めて吐き捨てた。途端にぶつかる音がして、 ゾロは迷わずカーテンを開けた。サンジが倒れていた。 ゾロはもう諦めていた。今日一日振り回されてやれば、縁は切れる。 サンジは裸のまま、ベッドに寝かされていた。 濡れた体は拭われ、毛布をきっちり肩までかけている。 大体、相当の大金を仕事の前に全額くれたのだ。これも金のうち。 ゾロは繰り返し自分に言い聞かせた。 裸を見るのは二度会ったうちで二度目だ。露出度の高い奴だ、 ゾロは一人でおかしくなるようなことを努めて考えた。 サンジの髪を拭いてやりながら、また時計を見た。 十二時を過ぎた。いい加減これで大人しく寝てくれたらいい。 ゾロは欠伸をした。こいつに会うたびに、睡眠不足を起こしている。 ゾロはタオルを放り投げると、ベッドへ入った。もう世話は焼かねえ。
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