Private Blue
T-3

「…」
オーナーゼフがサンジの部屋に入った時、 既にパティはサンジを介抱してやっていた。
「…従業員トイレに倒れてたって本当か」
「はい。ゴミ出しから帰って来やがらねえんで、 ヤキ入れてやろうと思ったんです、が…」
パティが目に腕を擦り付ける。
「とにかく、こいつが目を覚ましてから話を聞こう」
「き、聞くんですかい?」
パティが顔を上げて心配そうに言った。ベッドの上に寝かされたサンジは まだ目覚める気配もなく、眠っている。 パティが新しいシャツとズボンを着せてやったのか、 逆にそれが痛々しいように見えた。
「そりゃあ余りに酷じゃ…」
「しょうがねえだろう。腫れ物に触るように扱えば 逆に反抗的になりかねん。ああいう性格だ」
「…」
パティも、ドア口へ立っているカルネも頷いた。
「お前らは厨房へ戻れ。このことは誰にも言うんじゃねえぞ」
「わかってます、オーナー」
パティとカルネは厨房へ降りていった。
ゼフは階段を降りていく二人の足音が聞こえなくなると、小さく溜息を吐き、 ベッドに腰掛けた。そっとサンジの頭に手を置いた。
『今に見てろ! うまい料理山程作って、クソジジィに頭下げさせてやるんだ!』
営業が終わり、コックたちが一服する時、サンジはいつも クソジジィを泣かす話か、オールブルーの話をしている。 昨日もそうだった。
サンジの作ったスープストックのマズさに、ゼフが足を振り上げるまで、 サンジはずっとその話をしていた。
「…お前はまったく、世話を焼かせやがる」
ゼフは自分の右の膝から突き出した、義足を見つめた。
教えなければならないことが、また一つ増えた。

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