Private Blue T-4 パティが持って来た賄いの夕食に、サンジは飛びついた。 「腹減ってたんだ。昼に食い損ねたからな!」 カラ元気なのか、笑ってそういうと、スプーンを取る。 「おい、そんなにガッつくなよ」 サンジは無理を押し隠すように、次々と口に運んだ。 見る見るうちに皿が空になる。 「ハー。うまかった。今日の係は誰だ? お前じゃねえよなパティ」 「…」 こいつ、舌だけはいい。パティは腹を立てながら思う。 「やっぱりな」 「そういう口は、てめえが客に出せるようになってから聞け!」 笑うサンジに一発入れると、サンジは頭を抱えて文句を言った。 本当の事を言っただけだとか、言うだけなら口があれば出来るとか、 屁理屈をぶつぶつ呟いている。 口の達者なサンジのために、年中パティは怒っていた。 「カルネにうまかったって言っといてくれよ」 空になった皿を載せたプレートを持って、パティは部屋を出た。 確かに今日の当番はカルネだった。 階段でゼフとすれ違う。 ゼフはパティと目が合うと、少しだけよさ毛を動かして、 小さく溜息をついた。 「…チビナス」 ゼフは部屋へ入った。 「なんだ、クソジジィ」 サンジは魚介類の載った料理本から目を上げた。 「何があった」 ゼフの単刀直入な言葉にサンジは顔を強張らせた。 「パティがお前を見つけた」 「!」 サンジの顔が赤くなり、それから瞳に揺らぐものが浮かんだ。 じっと耐えるように堪えている。 「一応、俺はてめえの保護者なんでな」 ゼフが少し躊躇いがちに言った。サンジは堪えきれなくなったのか、 鳴咽を漏らして俯く。 サンジはベッドサイドの床に吐いた。 「お前が倒れていた事は、パティ、カルネとワシしか知らん」 ゼフが背中をさすった。サンジは泣きながら全部吐いた。 差し出された水を含み吐き出す。怯えたように視線を 動かすが、ゼフの目を見ることはなかった。 「バラティエの人間じゃねえだろうな」 サンジが首を振ったので、ゼフは少しほっとした。 「客なんだな? 顔は見たか?」 声が震えていた。 「見てねえ…柵のとこでタバコ吸ってた」 ゼフはじっと聞いた。 「ゴミ捨てて、上がってきたら、…デッキで殴られて」 思うように泣けないのか、サンジは苦しそうに目を擦った。 「き、気が付いたら、目隠しされてて…」 サンジは恐怖に耐えるかのようにそれきり口をつぐんだ。 「俺、もう寝る」 「ああ」 ベッドに頭まで潜り込んでしまったサンジに、それ以上は聞けなかった。 ゼフはサンジの吐いたものを始末すると、何も言わず出ていった。 眠れるわけがねえ…。 ゼフはパティから受け取った犯人の物と思われるハンカチを握り締めた。 織は滑らか、シルクの高級品で、洒落たデザインだ。刺繍が 施されている。V.I。重要な手がかりだが、金を持ってる客は多いし、 最初からこんな真似をするつもりだったのかは謎だが、 予約を入れた客ではないだろう。 サンジは犯人の顔を見ていないし、手がかりが少なすぎた。 こんな客にバラティエの飯を食わせたのだと思うと、 腹が立ってしょうがなかった。 出来る事ならこの足でぶちのめしたい。しかしこのハンカチ一枚では、 犯人を捜し出す手がかりになりようもなかった。 「クソ…!」 ゼフは思わず足を振り上げた。ゼフの部屋のドアが破れた。 数日後。 「なんだジジィ急に」 サンジは朝っぱらから叩き起こされて目を擦った。 「いいか、チビナス」 ゼフのマジな表情にサンジは眉を寄せた。 「てめえの身くらいてめえで守れや」 「…」 サンジはじっとゼフを見、頷いた。
Copyright © 2002 SHURI All Rights Reserved
|